はじめに
クラウドサービスの中でも圧倒的なシェアを誇るAmazon Web Services(AWS)は、多くの企業にとって不可欠なインフラストラクチャとなっています。その豊富な機能とスケーラビリティは、ビジネスの成長を支える強力な武器となりますが、適切な管理と運用を行わないと、予期せぬコスト増加を招くリスクがあります。本ガイドでは、AWSを利用する企業が直面するコスト管理の課題と、その具体的な解決策について詳しく解説します。
なぜいまAWSのコスト削減が重要か
AWSは従量課金制を採用しており、利用した分だけ料金を支払う仕組みです。この課金モデルは初期投資を抑えられる点で優れていますが、同時にリソースの使用量管理が不適切な場合、想定以上のコストが発生するリスクも内包しています。
また、今日の日本市場においては円安の進行がコスト高騰に拍車をかけているという現実も無視できません。AWSの料金は米ドル建てで設定されているため、円安の進行は日本企業にとって実質的なコスト増加要因となります。過去数年の為替動向を見ると、かつては許容範囲内だった利用料金が、現在では大幅に増加しているケースも少なくありません。このような外部環境の変化に対応するため、より戦略的なコスト管理の重要性が高まっています。
コスト最適化のための基本戦略
効果的なコスト削減を実現するためには、まず現状の利用状況を正確に把握することが不可欠です。AWSは利用状況の分析に役立つ様々なツールを提供しています。AWS Billing and Cost ManagementやAWS Cost Explorerなどのコスト管理ツールを活用することで、サービスごとの利用料金や使用パターンを詳細に分析することが可能です。これらのツールを用いて、不要なリソースや過剰なコストが発生している部分を特定し、最適化の方向性を決定します。
・AWS Billing and Cost Management
AWS Billing and Cost ManagementはAWSの請求、コスト、使用状況を包括的に管理するためのサービスです。主な機能は以下の通りです。
- 請求ダッシュボードで無料枠の使用状況や請求明細の把握
- 支払い方法の設定や請求書のDLなどの支払い管理
- IAMやOrganizationなどの設定でアカウント管理
・AWS Cost Explorer
AWS Cost ExplorerはAWSのコストと使用状況を分析・可視化するためのツールです。ユーザーインターフェースを利用したコストと使用状況の表示は無料です(APIを用いてプログラムからアクセスする際は1リクエストごとに$0.01の料金が発生します)。主な特徴は以下の通りです。
- サービス別、リージョン別、タグ別などの詳細なコスト内訳を様々なグラフや表形式で表示可能です。
- 時系列でのコスト推移や、カスタマイズ可能なフィルターとグループ化オプションで、コスト分析のための様々なユースケースに対応しています。
具体的なコスト削減方法
AWSでコスト削減を実現するためには、現状の使用状況を把握し、必要に応じた最適化を行うことが重要です。以下に、実際に使える具体的な手法を紹介します。
・不要なリソースの削除
AWS環境における不要なリソースの削除は、そもそも不要なものであるかの検討は必要なものの、手っ取り早いコスト削減方法でもあります。代表的な対象領域と削減対象は以下の通りです。
1. Amazon S3
- 未使用のEBSスナップショット
- 一時ファイルやログファイル
- テスト用データ
- 古いバックアップ
2. EBS Volume
- 未アタッチのボリューム
- 古いスナップショット
3. RDS ストレージ
- 未使用DBをスナップショット化し、起動時間分のコストを節約
- 過去の手動スナップショット
- スナップショットの保存期間の見直し
上記以外にも未使用のAMIの削除や、VPCエンドポイントの削除などがあります。
・インスタンスの柔軟な変更と停止
AWSでは、使用しているインスタンスの種類やサイズを必要に応じて変更することができます。たとえば、システムの負荷が低い深夜時間帯にインスタンスのサイズを縮小したり、開発環境で使用していない時間帯のインスタンスを停止したりすることで、大幅なコスト削減が可能です。
・RI(リザーブドインスタンス)の活用
また、長期的な使用が見込まれるリソースについては、リザーブドインスタンスの活用を検討すべきです。リザーブドインスタンスは1年または3年の期間で契約する必要がありますが、オンデマンドインスタンスに比べて最大72%の割引が適用されます。特に、本番環境など、安定した稼働が見込まれるワークロードに対しては、大きなコストメリットが得られます。
・Savings Plansの活用
Savings Plansは、利用パターンに応じてコストを削減するモデルです。このサービスはRIと同様の割引率を提供しながら、より柔軟な利用が可能です。インスタンスの種類やリージョンを跨いで割引を適用できるため、複数のサービスを運用している企業にとって、特に有効な選択肢となります。
実装のためのステップバイステップガイド
効果的なコスト最適化を実現するために、以下のような段階的なアプローチを推奨します。
1. 現状のコスト分析と目標設定
第一段階として、AWS Cost Explorerなどをはじめとしたコスト管理ツールを用いて、現状のコスト分析を徹底的に行います。過去数ヶ月分の利用状況を詳細に分析し、コストの主要な発生源と変動パターンを把握します。この分析結果に基づいて、最適化が必要な領域を特定します。
また、現状からどれくらい削減したいのか、それはなぜか、という現状分析や目標設定を立てます。小さい施策を積み上げるだけでいいのか、大胆にアーキテクチャの見直しをする必要があるのか、方針も変わってくるからです。
2. 導入計画を立てる
次に、具体的な最適化計画を策定します。インスタンスの使用状況やワークロードの特性を考慮しながら、どのような施策をどの順序で実施するかを決定します。この際、ビジネスへの影響を最小限に抑えることを念頭に置き、段階的な導入計画を立てることが重要です。
3. 実装
実装フェーズでは、まず小規模な変更から開始し、その効果を確認しながら徐々に範囲を拡大していきます。自動化ツールの導入や監視体制の整備も、この段階で検討すべき重要な要素です。最後に、本番環境に適用する前はテストを必ず行うようにしてください。
まとめ
AWSのコスト最適化は、単なるコスト削減ではなく、ビジネスの持続的な成長を支える重要な経営課題です。本ガイドで紹介した様々な施策を計画的に実施することで、効率的なクラウド運用を実現することができます。特に、為替変動などの外部要因によるコスト増加が懸念される現在の環境下では、これらの取り組みがより一層重要性を増しています。
定期的な見直しと改善を通じて、最適なコスト管理体制を確立し、競争力の維持・向上につなげていきましょう。適切な管理と戦略的な取り組みが、ビジネスの成長と収益性向上の鍵となります。
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