チーム内での議論が活発になるほど、内容を整理し、次のアクションにつなげる負担が大きくなることもあるのではないでしょうか。特に採用活動のような重要な意思決定では、長時間の議論内容を正確に把握し、適切な文面でフォローアップを行う必要があります。
こうした課題に対し、株式会社DELTAでは、Slackと連携可能なAI統合システムを開発しました。本記事では、Slackスレッドに蓄積された51件のやり取りから、メール文面を瞬時に生成した実装事例をご紹介します。
1. 複数のAIエージェントをSlack上で一元管理できるシステム
株式会社DELTAが開発し社内で実装した統合システムでは、チャットボットやRAG(文書検索システム)など、複数のAIエージェントを一つのSlack上で管理できます。
このシステムでは、LLM(大規模言語モデル)のFunction Calling機能(事前に定義されたツールなどを呼び出せる仕組み)を用います。それにより、ユーザーの発言を自動で分類し、適切なエージェントに振り分けることができ、ユーザーは複雑なコマンドを覚える必要もなくSlackとシームレスに連携できます。
2. 採用面接フォローアップ例|51件のやり取りから一瞬でメールを作成
実際の事例として、採用候補者に関する社内議論での活用が挙げられます。
採用候補者について、面接担当者や現場マネージャーなどの複数のメンバーが議論を重ねていました。結果、51件の返信が蓄積された長大なSlackスレッドが蓄積されていました。
議論の結果「候補者本人に直接確認すべき事項がある」という結論に至った際、担当者は「ここまでの内容をもとに、候補者に状況を確認するメールを生成して」と、システムと連携しているSlackのスレッド内に投稿しました。
システムは51件すべてのやり取りを瞬時に解析し、議論の要点を整理したうえで、候補者にふさわしい丁寧なメール文面を自動生成しています。
会話の途中からAIを呼び出しても、それ以前の文脈を把握したうえで、的確な内容を生成できています。
3. 返信漏れ・観点漏れリスク検知例|エージェントによるスレッド議論の自動レビュー
他の事例では、Slackスレッド上でのディスカッションに対するレビューというユースケースも存在します。
あるタスクについて、どのように進めるか、マイルストーンごとに期日がいつになるかをスレッド上でディスカッションしていると、投稿が増えていくにつれ「話すべきことがすべて話され、クリアになっているか」という全体像が見えづらくなることがあります。
そのため、特定チャンネルではスレッドに投稿された件数が一定以上になった際に、「ここまでの議論で抜けている論点、回答されていない質問、クリアでない事項があれば指摘してください」というプロンプトでのAIメッセージが自動で投稿されるように設定しています。
これにより、抜けている論点に気付くことが可能になっています。
4. ツール連携によりチーム内共有・議論が可能に
このようなメール文面の生成や議論内容のレビューなどではChatGPTなどのAIを活用する場面も少なくありません。
しかし、従来のChatGPTの利用では、生成結果をコピーして貼り付ける手間がかかるうえ、その場で追加の質問や議論をすることができずツールが分断されてしまうため、、継続的に活用されにくいという課題がありました。これに対し本システムでは、スレッドの途中からでもAIを呼び出すことができ、これまでの議論内容を踏まえて文面を生成できます。
これにより「危ない議論をしていた」「他に良い案があったのに見落としていた」といった事態を防ぐことができます。
また、AIが生成した文面はスレッド内に自動で表示されるため、チーム全員がその場で内容を確認し、修正提案や意見を出すことが可能です。
このように、既存のチャットツールと連携した本システムにより、意思決定のスピードを高めながら、質の高い成果物を短時間で作成する環境を実現しています。
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