グローバルクラウドの「今」を読む vol.7

今までのアーキテクチャが変わる!?
Amazon S3 Files ── オブジェクトストレージとファイルシステムの境界が消える日

今回のメルマガでは、2026年4月にAWSが正式リリースした Amazon S3 Files についてご紹介いたします。
これまでクラウドアーキテクチャを設計する上で、「S3はオブジェクトストレージであり、ファイルシステムではない」という前提のもと、用途に応じてEFSやFSxを組み合わせることが一般的でした。しかしながら、Amazon S3 Files の登場により、この設計の前提が大きく変わる可能性があります。
2026年4月をもって、その常識が変わりました。

■ Amazon S3 Files とは

Amazon S3 Files は、S3バケットをNFSファイルシステムとして直接マウントし、あらゆるAWSコンピューティングリソースからファイル操作で利用できるようにする、新しいマネージドサービスです。
対応するコンピューティングリソースは EC2、ECS、EKS、Lambda と幅広く、NFSv4.1以降のすべての操作(ファイルの作成・読み取り・更新・削除)をサポートしています。ファイルシステム上での変更は自動的にS3バケットへ同期され、逆にS3バケット側への変更もファイルシステムへ反映されます。
従来の類似機能である「Mountpoint for S3」との最大の相違点は、後述いたしますが、完全なPOSIXファイルシステムセマンティクスへの対応と、EFSを基盤としたキャッシュ層の存在にあります。

■ アーキテクチャの概要:EFS がキャッシュ層として機能する

S3 Files は、内部的に Amazon EFS を基盤として構築されています。
クライアント(EC2やLambdaなど)とS3バケットの間に、EFSがNFS機能を提供するレイヤーとして位置しています。クライアントはEFSに対してNFS操作を行い、その変更内容が約60秒間隔でS3バケットへ自動同期される構造となっています。
読み取り性能については、ファイルサイズによって以下のように動作が異なります。

  • 1MB未満のファイル:EFSキャッシュ層から提供され、約1ミリ秒の低レイテンシーを実現
  • 1MB以上のファイル:EFS層を介さず、S3から直接ストリーミングして高スループットを確保

この設計により、小さなファイルへの頻繁なアクセスは低レイテンシーで、大容量データの読み取りはS3のスループットを最大限に活用する形で処理されます。
なお、EFS単独での利用と比較した場合、S3との同期処理が介在する分、わずかにレイテンシーが増加する点については留意が必要です。

■ 推奨ユースケース

S3 Files が特に効果を発揮するユースケースは以下の通りです。
AI エージェント・機械学習トレーニングパイプライン:複数のコンピューティングノードが同一データセットを共有しながら読み書きするワークロードに適しています。データを複製することなくクラスター間で共有できるため、ストレージコストの削減と運用効率の向上が期待できます。
レガシーアプリケーションのクラウド移行:ファイルシステムを前提として設計されたアプリケーションを、S3をバックエンドとしてそのまま稼働させることが可能です。EFSやFSxへのデータ移行コストを削減できる場合があります。
AWS Lambda における一時ストレージの拡張:S3 FilesをLambdaにマウントすることで、従来の /tmp 領域(最大10GB)の制約を実質的に解消できます。
一方、オンプレミスNAS環境からの移行や特定のファイルシステム機能が必要なケース、HPCやGPUクラスター向けの超高性能ストレージが求められる用途には、引き続き Amazon FSx 系サービスをご検討ください。

■ おわりに

「S3はオブジェクトストレージであり、ファイルシステムではない」——この20年来のクラウド設計の前提を、Amazon S3 Files は大きく変える可能性を持っています。
S3の高い耐久性・コスト効率・スケーラビリティを活かしながら、ファイルシステムとしての操作性を両立できる点は、クラウドアーキテクチャの設計に新たな選択肢を加えるものです。EFSとS3の二重管理にお悩みの方、Mountpoint for S3 の制限にお困りの方は、ぜひご検討いただければ幸いです。
ご不明点やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

by 亀田 治伸

 

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