
生成AIによるレガシーシステムモダナイゼーションの現状
経済産業省が2018年のDXレポートで提唱した「2025年の崖」を受け、多くの企業がDX推進を進めてきましたが、現在もなお20年以上前のレガシーシステムを使い続けている企業は多数存在します。それだけ歴史のあるシステムの入れ替えは困難であるとうことを間接的に証明しています。全体の7割を超える企業が何らかの形でDXに着手していると回答する一方で、6割以上の企業では依然としてレガシーシステムが残存しており、完全に刷新できた企業は3割強にとどまっている、というレポートも存在しています。
レガシーシステムのモダナイゼーションにおける主な課題は以下と言われています。
① ブラックボックス化 — 老朽化・複雑化したレガシーシステムでは、システム設計を正確に把握できる有識者が不在のままブラックボックス化しているため、現行システムの調査や分析が困難で、設計書が古い・欠落しているケースが多い
② 人材不足 — COBOLをはじめとするレガシー言語に精通した技術者は年々減少しており、新しい世代のエンジニアがレガシー言語を学ぶ機会はほとんどありません。解析作業を担える人員が限られるため、モダナイゼーションプロジェクトの推進が困難になっています
③ 肥大したコードベース — 歴史を持つレガシーシステムにおける不要なソースコードは長年の継ぎ足し作業により、30〜50%に達するとの調査結果も存在しており、移行対象の選定がモダナイゼーションの成否を決める鍵となっていますがその依存関係の分析が困難です
生成AIが変えるモダナイゼーションの工程
生成AIを活用したモダナイゼーションツールは特に以下の工程で大きな効果を発揮しはじめています
仕様復元・ドキュメント自動生成
ナレッジグラフやRAGを活用した独自のAI技術により、プログラムソースと残存する設計書から人が読んで理解できる設計書を復元し、さらに復元された設計書をもとに新システムの要件定義書やプログラムソースの自動生成を実現
コード解析・可視化
AIによるコード解析ソリューションでは、プログラム全体の関数やファイルの依存関係を可視化し、自然言語での検索に対して改修すべきコードの候補をランキング形式で回答するほか、コードのロジックを要約して提示することで、当該システムに精通したエンジニアがいなくても処理内容を理解できるようになってきた
開発工程全体の効率化
要件定義・設計・開発・テストといった工程にAIを適用し、2〜5割の工数削減を目指す動きが本格化している
AWS Transform — AWSによるエージェントAIモダナイゼーションサービス
AWS Transform は、Windows・メインフレーム・VMwareなどのレガシーワークロードのエンタープライズモダナイゼーションを促進するために開発されたサービスです。AWSが保有する19年にわたる移行経験に基づいて構築されており、専用のAIエージェントが評価・コード分析・リファクタリング・依存関係マッピング・検証・変換プランニングといった複雑なタスクを自動化し、プロジェクトのタイムラインを大幅に短縮します。
AWSの発表によれば
1.NETアプリケーションのWindowsからLinuxへの移植を最大4倍高速化、VMwareネットワーク構成のAWSへの変換を80倍高速化
2.これまでに顧客が分析したメインフレームコードは11億行に上り、手作業で換算すると開発者388年分の作業時間を削減
3.Windowsモダナイゼーションでは運用コストを最大70%削減でき、メインフレームのモダナイゼーションにかかる期間を数年から数か月に短縮することも可能
とされています。対象がレガシーシステムでなくとも、例えば古いPythonはNodeランタイムを使用しているLambda関数は、弊社でも試したところわずか数分でバージョンアップが完了します。
生成AIによるモダナイゼーションは、従来は人手と時間が最大のボトルネックだった「仕様の解読」「ドキュメント復元」「コード変換」を自動化し、プロジェクト期間とコストを劇的に圧縮しつつあります。2025年以降はAIエージェントが複数工程を並列処理する「エージェント型モダナイゼーション」が本格化しており、AWS Transformはその代表的なサービスといえます。レガシー刷新の障壁だった技術的・人的リソース不足を、AIが補完する時代に入っています
by 亀田 治伸
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