グローバルクラウドの「今」を読む vol.3

【2026年最新】クラウドは「世界共通」から「国別」へ。加速するソブリンクラウドの現在地

 

かつてクラウドは「境界のないグローバルなインフラ」の象徴でした。しかし今、その常識が塗り替えられようとしています。キーワードは「Sovereign Cloud(ソブリンクラウド:主権クラウド)」。

データの所在地だけでなく、「誰が運用し、どの国の法律が適用されるか」という運用の主権を巡り、世界中で議論と変革が起きています。本日は、米国・欧州・日本の最新動向を整理してお届けします。

 

1. 米国:鉄壁の「隔離環境」を「マルチ」に使いこなす
米国では、政府・防衛専用のクラウド戦略が「器の確保」から「高度な活用」のフェーズへ移行しています。

「専用クラウド」による物理的隔離: 各ベンダーが提供する隔離環境(AWS GovCloud等)が定着。米国市民のみが運用に携わり、物理的にも論理的にも一般の商用環境から切り離された「最強のシェルター」が確保されています。

「マルチクラウド(JWCC)」による戦略的活用: その上で、国防総省はAWS、Microsoft、Google、Oracleの4社を併用するJWCC(Joint Warfighting Cloud Capability)を推進。特定ベンダーへの依存を避けつつ、AIはGoogle、事務はMicrosoftといった「適材適所」の運用を確立しています。

生成AIの政府導入: 2025年5月には、これら隔離環境上で最新AIが利用可能に。機密データを守りながら最新技術を使い倒すの環境が構築されています。

 

2. 欧州:規制と投資が爆発、2027年には北米を逆転か
「デジタル主権」の旗振り役であるEUでは、法規制と市場が凄まじいスピードで動いています。

「脱・ロックイン」の加速: 2025年9月適用の「EU Data Act」により、クラウド間の乗り換え障壁が法的に排除。AWSやGoogleによるデータ転送手数料の無料化は、この流れを汲んだものです。

欧州専用クラウドの誕生: 2026年1月15日、「AWS European Sovereign Cloud」が正式ローンチ。ドイツを拠点とし、運用・管理をEU市民に限定する完全分離を実現しています。

市場の急伸: Gartner(2026年2月発表)によれば、欧州のソブリンクラウド支出は2026年に前年比83%増の126億ドルに達し、2027年には北米を追い抜く見通しです。

 

3. 日本:外資4強の先行と、国産クラウドの「悲願」
日本でも行政DXの基盤となるガバメントクラウドの整備が進んでいますが、その実態は「外資ハイパースケーラーの先行」が極めて鮮明です。

「外資4社」による圧倒的な先行: 現在、ガバメントクラウドの現場では、AWS、Google Cloud、Microsoft Azure、Oracle Cloud Infrastructureの4社が、すでに実用的なインフラとして全国の自治体や中央省庁で広く採用されています。機能の豊富さ、グローバルで培われた高度なマネージドサービス、そして既存システムとの親和性において、これら4社のプラットフォームは事実上の標準(デファクトスタンダード)として定着しています。

「国産枠」の正念場: この外資4強の厚い壁に挑んでいるのが、2023年に条件付きで採択されたさくらインターネットです。国産クラウドとして唯一この枠組みに入っていますが、あくまで「条件付き」のスタートでした。

 

2026年3月末というデッドライン: 同社は、外資各社がすでに満たしている膨大な技術要件(ガバメントクラウドの厳しいセキュリティや機能基準)を、2025年度末(2026年3月末)までにすべて充足しなければなりません。2026年2月現在、開発はまさに最終局面。外資4社が先行する市場において、「デジタル主権の守り神」として日本独自の選択肢を確立できるか、官民双方が固唾をのんで見守っています。

 

「クラウドはどこも同じ」という時代は終わりました。これからのIT戦略で問われるのは、扱うデータの「機密性のレイヤー」に応じた適切な置き場所の選択です。

特に以下の情報は、一般的な個人情報よりも一段高い保護が求められます。

  • 要配慮個人情報: 病歴、信条、犯罪歴など、不当な差別や偏見に直結する情報。
  • 特定個人情報: マイナンバーを含む、法的制限が極めて厳しい情報。
  • 金融機微情報: 資産状況や借入履歴といった「経済的信用」、および決済に直結する「財産的情報」。

これらの情報は、一度流出すれば取り返しがつかない社会的・経済的不利益を本人に与えます。だからこそ、利便性だけではなく、「他国の捜査機関による差押えリスクを排除できるか」「国内法が100%適用されるか」というソブリン(主権)の視点が不可欠なのです。

御社のデータマネジメント、今一度「主権」の観点から再点検を行う際、是非弊社コンサルタントにご相談ください。

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