FinOpsとは|定義・原則と3つのフェーズ

FinOpsとは|定義・原則と3つのフェーズ

クラウドの請求額が毎月増えているのに、どのサービスの、どの機能で増えたのかを説明できない。FinOps は、こうした状態をエンジニア・財務経理・事業の担当者が一体となって変えていくための概念です。

この記事では、2026年3月に公開された FinOps Framework の現行版をもとに、FinOps の定義、6つの原則、関わる役割、KPI、成熟度、3つのフェーズを解説します。2025年版と2026年版で変わった点や、AI の費用の考え方も取り上げます。

あわせて、株式会社DELTA のクラウドコスト削減サービス「CTO Booster」で支援した事例をご紹介します。FinOps の考え方が、実際の会社でどのように導入されたのかご紹介いたします。

FinOpsとは

FinOps(フィンオプス)とは、エンジニア・財務経理・事業の担当者が協力して、クラウドなど IT の費用に見合う価値が出ているかを確かめ、使い方を見直し続ける取り組みです。

名前は Finance と DevOps を組み合わせた言葉で、Linux Foundation のもとで活動する FinOps Foundation が考え方をまとめています。現行版の定義では、FinOps の役目を、技術から得る事業の価値を最大にすること、データにもとづく判断を適切な時期に行えるようにすること、チームの協力で費用への責任をはっきりさせること、の3つとしています。

対象はパブリッククラウドだけでなく、SaaS、データセンター、データ基盤、AI の費用にも広がっています。

コスト削減との違い

コスト削減は、費用を減らすこと自体が目的です。FinOps は、使った費用に見合う価値が出ているかを見て、費用を増やすか減らすかを決めます。売上が伸びているプロダクトなら、費用を増やすのが正しい判断になる場合もあります。

株式会社Stack様の「SQ」は、2025年3月のセカンドリリースで数百のブランドが使うサービスになり、トラフィックとともにサーバー費用も急増しました。クラウドコストの見直しを株式会社DELTA にご依頼いただき、事業の成長を優先しながらも月額約55万円の削減につなげています。

コスト管理ツールとの違い

コスト管理ツールは費用の可視化や分析、予算管理、最適化などを支援するものです。一方、FinOpsは、そこで得られた情報を誰が見て、誰が判断し、誰が行動するかまで含めた組織的な取り組みです。

コスト管理ツールでは、費用の内訳や推移をグラフや表で確認できます。AWS Cost Explorer、Google Cloud の Cloud Billing レポート、Microsoft Cost Management などがあります。

ツールを入れても、見る人と判断する人が決まっていなければ、費用は下がりにくくなります。反対に、高価なツールがなくても、各クラウドに標準で付いている機能から始められます。

FinOps が求められる背景

使う人と払う人が離れたまま、請求だけが先に増えていくことが、FinOps が必要とされる理由です。

クラウドでは、エンジニアが数分でサーバーを増やせます。一方で、費用が管理画面に出るまでには時間がかかるため、コスト管理の仕組みが整っていない場合、月末の請求で費用の増加に気づくことになります。

  • 使う人と払う人の違い
    構成を決めるのはエンジニアですが、請求書は財務経理が把握している状況もしばしば発生します。クラウドでは承認なしでサーバーを増やせるため、財務経理が把握する前に費用が発生します。
  • 開発の速さ
    新しい機能を早く出すことが求められるなかで、サーバーを増やすたびに社内承認を求めると、開発が遅くなります。開発を止めずに費用を把握する仕組みが要ります。
  • 責任のあいまいさ
    複数のプロダクトが使う共通の基盤やデータベースの費用は、誰が管理責任を持つか決まっていないと、後回しにされがちです。
  • 使った分だけ払う費用の広がり
    クラウドのサーバー代だけでなく、SaaS の利用料や生成 AI の API 利用料など、使った量に応じて払う費用が増えています。

FinOps の6つの原則

FinOps Foundation は、FinOps を進めるうえでの原則を6つ示しています。

FinOps の6つの原則

2025年版で、4つの原則の表現が変わりました。対象がクラウドから IT 全体に広がったため、「cloud」が「technology」に置き換わるなど変化がありました。

2025年に変わった原則の表現

FinOps に関わる役割(経営・財務経理・開発)

FinOps Framework では、関わる人を役割(ペルソナ)で分けています。中心となる役割は次の6つです。

FinOps に関わる6つの役割

経営・財務経理・開発の3者は、見ている数字が違います。経営は売上に対する費用の比率、財務経理は予算との差、開発はサービスごとの使用量を見ています。同じ費用についてそれぞれの観点で話せる場をつくることが、FinOps の始まりです。専任の担当を置けない会社では、CTO や情報システムの責任者が兼ねることが多くあります。

作業を外部に任せても、判断は社内に残ります。株式会社ジモティー様では、株式会社DELTA が候補ごとに調べる手間と下がる額をまとめ、株式会社ジモティー様が運用への影響を確かめて最終の判断をしました。その結果、月額約200万円の削減につながっています。

FinOps の KPI とレポーティング

FinOps Framework では、KPI(重要な指標)と他社との比較を「KPI & Benchmarking」という活動として扱っています。月次で経営に報告するなら、次の4つが基本です。

月次で報告する4つの KPI と目安

1件あたりの費用は、事業の伸びと切り離して効果を見られる数字です。KPI は、どの通貨で見るかも決めておきます。面白法人カヤック様は、社内の施策でドル建ての目標を達成したものの、円安で円建ての目標には届いていませんでした。そこから株式会社DELTA の支援で、さらに月額約5%を削減しています。

レポートは、当月の請求額と予算・前月との差、増えた理由、実施した施策と効果、来月の予定、経営に判断してほしいことの5つを1枚にまとめ、毎月同じ形で出すことが理想です。

FinOps の成熟度(Crawl・Walk・Run)

FinOps Framework では、取り組みの進み具合を Crawl・Walk・Runの3段階で表します。

成熟度の3段階(Crawl・Walk・Run)

公式の説明では、すべての活動で Run に達すること自体を目標にすべきではないとされています。事業や技術の成果につながる活動から優先して進めます。たとえば、誰の費用かが分からず判断が止まっているなら、割引プランの見直しより先に、タグで費用を分けるところから着手します。

社内で見直しを終えた会社でも、削減できる費用を見落としていることがあります。株式会社MICIN様は当初「やり切った」と考えていましたが、無料診断で削減の余地が見つかり、年間約200万円弱を削減しました。

FinOps の始め方(可視化・最適化・運用の3フェーズ)

FinOps Framework では、Inform(可視化)、Optimize(最適化)、Operate(運用)の3つのフェーズを繰り返し回します。決まった間隔で小さく回し、慣れてきたら範囲を広げます。

可視化(Inform)

費用と使用量のデータを集め、誰が何にいくら使っているかを割り当てます。予算と予測、KPI もこの段階で決めます。まず、請求データをプロダクト別・環境別に分けられるかを確かめ、タグのルール(product、env、owner など)を決めます。

最適化(Optimize)

見えたデータから、改善の候補を探します。サイズの見直しや使っていないリソースの削除、構成の変更で使用量を減らす方法と、割引プランなどで同じ使い方のまま単価を下げる方法があります。

候補を選ぶときは、施策そのものにかかる費用も比べます。株式会社オークファン様では、実施に200万円かかる S3 の保存方法の切り替えを、ほかの施策で下がった分と相殺する形で実行し、月額約80万円の削減につなげました。

運用(Operate)

選んだ変更を実行し、その結果を次の可視化で確かめます。続けるには、費用を話し合う場と、決める人を先に決めておきます。たとえば週1回30分、費用を振り返る場を設けます。

3つのフェーズ(可視化・最適化・運用)

FinOps Framework の更新と AI の費用

FinOps Framework は毎年見直されています。

2025年 Scopes の導入

2025年版で「Scopes(スコープ)」が加わりました。現行版の説明では、Scope は、プロダクト、コストセンター、環境など、事業の単位ごとに切り出した費用のまとまりです。Scope ごとに、関わる人や活動の頻度を変えられます。

2026年版では、Scope は事業からの問いに応えて作るものだと説明されています。たとえば経営から「AI にいくら使っているか」と聞かれたら、なぜ知りたいのかを確かめてから Scope を作ります。

2026年 Executive Strategy Alignment の新設と Technology Categories の拡充

2026年3月に公開された現行版では、経営戦略と技術への投資をつなぐ活動として「Executive Strategy Alignment」が加わりました。あわせて、パブリッククラウド、SaaS、データセンター、データ基盤、AI の5つに、技術の種類ごとの手引き(Technology Categories)が用意されています。「Workload Optimization」が「Usage Optimization」になるなど、活動の名前も一部変わりました。

AI の費用(FinOps for AI)

FinOps Foundation の資料では、AI の費用は予測しにくく、試行錯誤が多いため急に増えやすいとされています。大規模言語モデル(LLM)の API を使うサービスでは、次の点を押さえます。

  • 出力の単価
    出力のトークンの単価は、入力の3〜5倍になることが多いとされています。
  • 会話の長さ
    過去のやり取りを毎回送る作りでは、会話が長いほど入力のトークンが増えます。
  • 使い方の設計
    繰り返し送る内容はキャッシュ、急がない処理はバッチ処理に回すと、単価を下げられる場合があります。
  • モデルの選び方
    単価の安いモデルでも、指示文が長くなったりやり直しが増えたりすると高くつきます。1件の問い合わせに答えるまでの費用で比べます。

FinOps の実践事例

株式会社DELTA のクラウドコスト削減サービス「CTO Booster」で支援した事例と、公開されている他社の取り組みを、3つのフェーズにあてはめてご紹介します。

株式会社favy様の例(可視化から運用まで)

飲食店向けの SaaS などを運営する株式会社favy様は、日々の開発を優先するなかで、インフラ費用の見直しに手が回っていませんでした。株式会社DELTA は数か月分のメトリクスから大きすぎるリソースを見つけ(可視化)、減らしすぎない大きさに合わせる案と、使われていない固定IPアドレスなどの整理を選び(最適化)、隔週の定例で根拠を共有しながら実行しました(運用)。月間約38%の削減を見込んでいます。

株式会社カケハシ様の例(見込みどおりの削減)

利用の規模が広がるにつれて費用が増え、社内の施策だけでは目標の額に届いていませんでした。株式会社DELTA は、データベースと NAT まわりの構成、不要なリソース、インスタンスサイズを見直し、毎回整理したデータを共有して判断を支えました。事前に示した見込みとほぼ同じ、月額約55万円(約21%)の削減につながっています。

株式会社メルカリの例(費用を見える形にして組織を変えた)

メルカリのエンジニアリングブログ(2022年12月6日)では、クラウド費用が想定を上回って増えたことをきっかけにした取り組みが紹介されています。請求書を受け取る責任者を決め、プロジェクトごとに前月と比べるダッシュボードを作り(可視化)、一時的に有効にしたまま残っていた設定を見つけて直しました(最適化)。費用を減らしたチームを全体のミーティングで紹介する場も作っています(運用)。

FinOps のよくある質問

Q. FinOps とはどういう意味ですか?

Finance と DevOps を組み合わせた言葉です。エンジニア・財務経理・事業の担当者が協力して、IT の費用に見合う価値が出ているかを確かめ、使い方を見直し続ける取り組みを指します。

Q. AWS の FinOps とは何ですか?

AWS の上で FinOps を進めることです。コスト配分タグで費用を分け、Cost Explorer で推移を見て、Budgets で予算の超過を知らせ、Cost Optimization Hub で見直しの候補を集めます。

Q. FinOps フレームワークとは何ですか?

FinOps Foundation が公開している、FinOps の進め方の全体像です。原則、役割、フェーズ、成熟度、スコープなどで組み立てられ、毎年見直されます。現行版は2026年3月に公開されました。

Q. FinOps とコスト削減サービスの違いは何ですか?

FinOps は社内で続ける取り組みで、主役は自社のチームです。コスト削減サービスは、見つけた削減の余地を外部が作業まで代行するものです。

FinOps の実行を外部に依頼する場合

FinOps は社内で回すものですが、費用を見える形にして削減の候補を見つけても、作業する人の手が足りず、最適化の段階で止まることがあります。その場合は、判断のルールづくりは社内に残し、見つけた施策の作業だけを外部に任せる方法があります。

株式会社DELTA の CTO Booster は、無料の診断で削減の余地を見積もり、施策の実行から効果の測定までを代行するサービスです。インフラだけでなくアプリケーションのソースコードまで見直し、AWS・Google Cloud・Azure に対応しています。

料金は完全成果報酬です。調査や改善案づくりの工数に費用はかからず、クラウド事業者の請求から削減額を算出し、その額に応じて報酬が決まります。施策の完了から2年間は、株式会社DELTA のエンジニアがご質問やご相談に対応いたします。

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